先生からのメッセージ
- 国立成育医療研究センター 周産期・母性医療センター
主任副センター長、妊娠と薬情報センター長(併任)
一緒に人生を歩んでいる仲間として
当センター内にある母性内科は、妊娠・出産を専門とする産婦人科と、病気を専門とする内科の架け橋として、関節リウマチを含む膠原病、高血圧、呼吸器疾患、腎疾患などの慢性疾患を持つ妊婦さんの診療、及び糖尿病、高血圧などの妊娠合併症の治療を行い、母子ともに健やかな妊娠・出産を目指しています。
関節リウマチは比較的若い女性の発症率が高く、結婚や出産に関節リウマチが及ぼす影響については、本人はもとより家族にとっても大きな関心事です。私が関節リウマチ診療に取り組み始めた20年前は治療薬の選択肢が限られていたこともあり寛解の導入・維持が難しく、発症後の妊娠・出産の可能性が低かったことから、若い女性の関節リウマチ患者さんでは多くの方が妊娠を諦めていました。私はこのような不条理の中で闘病する患者さんの力になりたいという思いで、診療に取り組んできました。ですから、私にとって患者さんは、一緒に人生を歩んでいる仲間ですし、言い換えると患者さんに励まされながらやってきたとも言えます。
妊娠前の関節リウマチのコントロールが必要
現在は治療薬の進歩もあり、関節リウマチのコントロールがしっかりできていれば妊娠・出産は可能となりました。ただし、妊娠希望の場合は現在使用している治療薬を続けていいものか、一旦中止する必要があるかなど、事前に主治医と相談し、治療計画を立てておく必要があります。
妊娠・出産で関節リウマチの病状が悪化するのではないかと思われるかもしれませんが、妊娠すると免疫系のプロファイルが変化するため、むしろ病状は改善する傾向があります。出産後は逆に病状が悪化する傾向がみられますので、治療を再開することになります。
治療開始とともにライフプランを早めに考える
患者さんの中には、治療薬を休薬できるくらいに病状が改善してから妊娠を考えようとする方もいます。しかし、 40代になると妊娠しにくくなり、不妊治療も必要となりかねません。関節リウマチの治療開始とともにライフプランを早めに考えていただきたいと思います。男性患者さんの場合も自分が使う治療薬が赤ちゃんに影響を及ぼすのでは、と心配される方もおられます。まずは主治医に相談されるとよいと思います。
昨今では、治療の進歩により、関節リウマチだからという理由で妊娠・出産を諦めなければならないことは少なくなっています。患者さんには前向きにご自分らしい人生を歩んでいただきたいと思います。
村島 温子 先生
1982年筑波大学医学専門学群卒業。1985年順天堂大学膠原病内科学講座入局。1995年順天堂大学膠原病内科学講座講師。2002年国立成育医療研究センター周産期診療部母性内科医長。2008年同センター妊娠と薬情報センター長併任、2010年同センター母性医療診療部部長、2013年より現職。
国立成育医療研究センター
病床数:490床
所在地:東京都世田谷区大蔵2-10-1