先生からのメッセージ

高齢患者さんでは周囲のサポートが治療を左右する

  • 久喜リウマチクリニック 院長
Urata Yukitomo
浦田 幸朋先生

ガイドライン通りの治療が当てはまらない患者さんもいる

 当院では80代、90代といった高齢で多くの合併症をかかえた患者さんの地域治療の受け皿となることを目標としています。高齢の患者さんは身体機能の低下などから薬の副作用が出やすく、合併症がある場合は使用できない薬もあります。このためリウマチ診療のガイドライン1)通りの治療を行えないケースもありますので、主治医とよくご相談の上、治療に臨んでください。

 治療開始前には必要な合併症検査も行われますが、たとえばB型肝炎検査は多くの市町村や保健所で費用が補助されますので、一度ご確認いただければと思います。

*厚生労働省 ウイルス性肝炎等の重症化予防推進事業
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/kangan/kensa.html
(2024年12月閲覧)

高齢者の服薬管理にはご家族のサポートが必要。
難しければホームヘルパーの導入を

 高齢の関節リウマチ患者さんで最も懸念されるのは服薬状況です。認知機能が低下している患者さんでは、飲み忘れや二重服用などのリスクがあります。ご家族には患者さんがどの薬をどのように飲んでいるのかを確認いただきたいですが、ご家族が忙しい、あるいは独居の患者さんの場合は介護保険を利用してホームヘルパーをお願いすると良いでしょう。

 服薬管理に問題がある場合は、注射剤に変更する方法もあります。自己注射をご希望の場合は患者さんの代わりにご家族が指導を受けることも可能ですので、主治医にお尋ねください。

 高齢化が進む現在は、周囲のサポートをどれだけ得られるが関節リウマチの治療選択にも関わってくる時代といえます。

浦田 幸朋先生

脱水は体調不良や感染症のリスクに

 高齢者になると体温調節機能が低下するため、寒がって暖房を過度に使用していることや、反対に夏でも暑さを感じず冷房を使用していないことがあります。室温が30度近くまで上昇すると脱水の危険性が高くなります。脱水になると腎機能や免疫力が低下し体調が悪化したり、感染症に罹りやすくなります。室温に気を配り、水分補給をしっかり行うことが大切です。

 感染症対策としては、インフルエンザ、帯状疱疹、肺炎球菌などのワクチン接種も勧められます。

浦田 幸朋先生

運動でADLを保つことも治療に重要

 高齢の関節リウマチ患者さんでは日常生活を保つために最低限必要な動作(ADL)を維持することが治療にも重要です。特に足の衰えは車いすの使用や寝たきりにつながります。また、日常生活が保てなくなり介護施設に入所すると、かかりつけ医に通院できなくなったり、これまで使用していた治療薬の処方を受けられなくなるなど、関節リウマチの治療に支障を来たすケースもあります。

 ADLを保つためには、日ごろから運動を心がけましょう。翌日に疲れや痛みが出ない範囲ならご自身のお好きな運動をしていただいて大丈夫です。晴れて気分が良い日には、1日4000歩を目安に散歩をするのも良いでしょう。関節に負荷がかからない水泳や、関節の可動域を無理に広げる動作のないラジオ体操もお勧めです。ただし、「肩甲骨はがし」のような動作は関節を痛める可能性がありますので避けてください。

参考文献

  • 1)日本リウマチ学会:関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂、診断と治療社

浦田 幸朋先生

浦田 幸朋

1991年藤田学園保健衛生大学医学部医学科卒業。1995年藤田医科大学病院腎臓内科、1998年都立府中病院(現都立多摩医療センター)を経て、2001年マサチューセッツ総合病院に勤務。2002年弘前大学医学部、2007年五所川原市立西北中央病院リウマチ科科長、2012年つがる西北五広域連合西北中央病院リウマチ科科長、2014年つがる西北五広域連合つがる総合病院リウマチ科科長。2024年より現職。

久喜リウマチクリニック

病床数:なし
所在地:埼玉県久喜市久喜中央4-9-11 イトーヨーカドー久喜店5F

取材:2024年
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