先生からのメッセージ

関節リウマチの機能的寛解に大きな役割を果たす外科治療

  • 日本大学医学部附属板橋病院 整形外科 准教授・外来医長
Lee Hyunho
李 賢鎬先生

変形で失われた関節機能を取り戻す―機能的寛解を可能にする外科手術や装具

 近年、関節リウマチ領域では新たな治療薬の登場による薬物治療の選択肢の広がりを背景に、早期から適切な治療を行うことで寛解状態に達することも可能になってきました。 寛解には、①疾患活動性が抑えられ症状がみられなくなる臨床的寛解、②関節破壊が止まり関節の構造が維持される構造的寛解、③身体機能が維持され不自由なく体を動かせる機能的寛解の3種類があります。このうち臨床的寛解と構造的寛解は薬物治療で達成可能ですが、機能的寛解は一度関節が変形し身体機能が失われてしまうと薬物治療のみでの達成は難しく、外科手術や装具の活用が必要となります。このように関節リウマチの機能的寛解において、外科手術は大きな役割を担っています。

李 賢鎬先生

変形が気になったときが整形外科への相談タイミング

 薬物治療の進歩とともに、関節リウマチの外科手術も様変わりしています。薬で関節の炎症を止めることが難しかった時代は関節破壊まで進行してしまうケースが多く、関節を丸ごと取り換える関節置換術や関節を使いやすい角度で固定する関節固定術がほとんどでした。しかし現在は薬物治療により関節の炎症を抑えられ、関節破壊に至る患者さんが減ったため、関節を可能な限り温存する関節温存術が行われるようになりました。

 ただし、関節温存術は関節をある程度動かすことができるうちに行う必要があります。変形が進み関節が動かなくなると、関節の温存は難しくなります。そのため「少し変形が気になるかな」と感じたら一度整形外科に相談することをお勧めします。

 なお、関節温存術を行っても、基本の薬物治療を怠ると再発につながり、関節破壊が再度進行することがあります。術後も医師の指示に従い適切な治療を継続していただければと思います。

納得して治療を行うことが大切

 さまざまな治療選択肢が増えた結果、関節リウマチ治療は患者さんのライフスタイルに合わせて薬も手術も選べる時代になりました。それだけに医師である私自身も治療選択について悩むことが多くなっていますが、そんなときは「自分の母親だったらどうするだろう」と、患者さんを自分の家族だと思って考えることを大切にしています。

 とは言え、治療を成功させるには、医師が一方的に良いと思った治療を行うのではなく、患者さんもご自身の希望を主治医に伝え、十分話し合ったうえで納得して治療に臨むことが大切です。ご自身の症状の変化をいつも積極的に把握し、前向きに治療に参加している患者さんは、治療の成果も出やすいように思います。

李 賢鎬先生
李 賢鎬先生

李 賢鎬

・2006年 日本大学医学部 卒業
・2014年 日本大学大学院 卒業
・2015年 新潟県立リウマチセンターリウマチ科 勤務
・2017年 日本大学医学部整形外科 助教
・2024年 日本大学医学部整形外科 准教授 現在に至る

外来診察日:月曜AM、火曜AM
初診予約:(03)3972-8197

日本大学医学部附属板橋病院

病床数:990床
所在地:東京都板橋区大谷口上町30-1

取材:2024年
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