先生からのメッセージ

痛みからの解放に向けた適切な治療のための心得

  • 和歌山県立医科大学医学部 リウマチ・膠原病内科学講座
Iwata Shigeru
岩田 慈先生

適切な治療で痛みからの解放を目指す

 関節リウマチ患者さんの中には関節の痛みや腫れを抱えて長期間過ごしてきたため、辛い状態が当たり前だと思い込み、これ以上は良くならないと誤解されている方がいらっしゃいます。しかし昨今の治療は新薬の登場で劇的に進歩しています。適切に治療を受ければ痛みが軽減され、今よりも動けるようになるということをぜひ知っていただきたいと思います。

 以前、グルココルチコイド(通称ステロイド)を処方されたことがある患者さんで、「痛みが取れるからまた処方してください」とおっしゃる方がいました。しかし、関節リウマチでグルココルチコイドを使用する場合は発症3カ月以内で日常生活動作が低下してしまっているような場合にのみ短期間で使用するのが原則です。漫然と使い続けると骨がもろくなる、筋力がおちる、心血管イベント(脳梗塞、心筋梗塞など)のリスクが高くなる、感染症にかかりやすくなるなど多くの副作用が心配されるだけではなく、長期使用後に急にやめると離脱症状(倦怠感、嘔気、頭痛、血圧低下)が出現する場合があります。グルココルチコイドの使用は主治医からの指示がない限り避けていただき、使っている場合も主治医と相談し、できるだけ減量、中止していただくようにしましょう。

気を付けたい合併症―呼吸器感染症と骨粗鬆症

 関節リウマチの治療では免疫抑制作用のあるお薬を使いますので、感染症を合併しないような対策をする必要があります。特に肺炎などの呼吸器感染症を合併する場合が多いため、肺炎球菌ワクチンなどは積極的に接種しておきましょう。

 もうひとつ気を付けたい合併症が骨粗鬆症です。関節リウマチは骨粗鬆症を合併しやすいうえ、女性患者さんでは閉経後、ホルモンバランスの変化により骨粗鬆症を起こしやすくなります。日頃から骨密度を意識し、日常生活においては転倒などに十分注意しましょう。骨密度検査を受ける機会がない場合は、主治医にお尋ねいただければと思います。

岩田 慈先生

高齢患者さんの服薬管理は家族の協力が必要

 患者さんは傍目で見ている以上に倦怠感や痛みで悩まれている方が多いので、ご家族や周りの方は配慮していただければと思います。また、高齢の患者さんではお薬の飲み忘れや過剰服用、注射剤がうまく打てないなどの服薬管理問題がさまざま出てきます。ご家族も関節リウマチについて患者さんと一緒に学んでいただき、服薬の見守りなども含めてご協力いただく必要があるでしょう。

岩田 慈先生
岩田 慈先生

岩田 慈

2001年産業医科大学医学部医学科を卒業し、産業医科大学病院産業医学修練医(臨床研修医)、2003年同病院産業医学修練医(専門修練医)となる。2007年産業医科大学大学院医学研究科障害機構系専攻博士課程に入学し、2011年同大学院を修了。2013年米国国立衛生研究所客員研究員、2015年産業医科大学若松病院リウマチ糖尿病内科学内講師、診療科長兼リスクマネージャー兼臨床検査輸血部長、2016年産業医科大学第一内科学講座学内講師、外来医長、研究室長を歴任し、2021年同大学第一内科学講座講師となる。2022年和歌山県立医科大学リウマチ膠原病科学講座准教授に就任し、2024年より同大学大学院医学薬学総合研究科准教授を兼任、現在に至る。

和歌山県立医科大学附属病院

病床数:800床
所在地:和歌山県歌山市紀三井寺811番地1

取材:2024年
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